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▼大貫さん:
>安全弁から漏出したガスが車庫の天井に溜まったりするのは怖いです。
長期間放置された場合は、少しずつブローを続けるしかありません。
安全弁が吹くような状態では大きな音を立てて一気に放出するので、こうならないようにガスをブローするのですが、放置した場合だけでなく、何らかの故障で漏れた水素がガレージなどの中に充満してちょうどよいころあいの混合気体になった時にドカンとガス爆発するのが心配です。一般の台所にあるようなガス検知器でも精度を無視すれば検出は可能です。
>天然ガス車がLNGではなくCNGを使っているのは、主な理由は都市ガスだからだと思いますが、扱いの大変さもあるのではないでしょうか。
都市ガスの会社ではほとんどの在庫をLNGで持っているため大きな圧縮エネルギーをかけてまでCNGにするよりはLNGのまま使える方が楽だと思います。
LNGが使いにくいのはLNGが混合物なので同じ組成で蒸発させるのが難しいことにあります。低沸成分であるメタンがどうしても先に蒸発しやすく自動車のような小さなタンクでは組成を一定にするのが難しく蒸発器の構造にも制約が生じます。
CNGだと工場の大型の蒸発装置で気化したものを圧縮するか、液体を圧縮したものを蒸発させるかどちらかの方法でボンベに詰めているためこういう問題はありません。
また、LNGは液体水素より100度も高温ですが構造材料としてはやはり低温用が必要なためややコスト高になるのも難点です。
>液体水素の場合はシーリングの大変さも加わりますし。
低温液化ガスのシールは水素だけが特別難しいということはありません。天然ガスや窒素でも似たようなものです。
>爆発の安全性という点では、むしろ低温が安全側に働きますよね。
残念ながらもしも爆発をした場合は、低温であるということはさほど安全には貢献していません。水素は蒸発潜熱も比熱も小さく冷却効果は期待しない方がよいと思います。ただ単に温度が低いだけです。大量に漏れた場合、ガソリンのように地面を広がっていかないので被害が広がりにくいという利点はあります。
>高圧水素の方が事故時に火炎放射器状態(しかも無色透明)になったりしないのでしょうか...
ボンベ自体は車体よりはるかに丈夫だと思いますが、車自体は跡形もない状態くらいの事故だったら、壊れることがあるかも知れません。
高圧水素が噴出した場合ですが、噴出しているところに火をつけるのは容易ではありません。普通は水素が多すぎて酸素が足りません。
少し距離が離れると一気に拡散するため,やはり火がつきません。
水素で火炎放射器(この兵器の燃料はガソリンだと思います)つくるのは難しいです。
ロケットエンジンは非常に上手な方法で水素と酸素を混合して燃やしていますが感心します。
事故でボンベが壊れた場合は、火がつくことよりも、ボンベが飛んでいく方が怖いです。
>液化しても密度が低いですし、高圧容器でも問題ないわけですね。
水素の超高圧ボンベは臨界圧力に近いところまできていますから、液体の密度とそんなに大きな差はありません。安全性(信頼性)・圧力(走行可能距離)・コストのバランスが重要です。
あと水素の液化には膨大なエネルギーがかかることは重要な問題です。
水素の潜熱は小さいのですが液化サイクルというのは低温になればなるほどエネルギーを食います。ガスと液とどっちが良いかというのはトータルのバランスで決める問題だと思います。まだ結論は出るのは先のことだと思います。
>スラッシュ水素なら冷房熱源にも使えて...とか言い出すと泥沼なのでやめときます。
スラッシュ水素はアメリカの宇宙開発でもまだ成功していません。
コストをかけてもよいから少しでも多く積みたいロケット専用です。
液体水素とのコスト差を考えると民生品としては全く望みがありません。
>ちなみに、現状の高圧容器との比較でも、水素吸蔵合金やカーボンナノチューブの方がコンパクトになる(理論上)のですか?
水素吸蔵合金は原子で貯蔵して分子で取り出すためあっと驚くほどの吸蔵が可能です。
水素原子と水素分子の大きさは3桁違いますから、分子のまま圧縮している高圧容器や液体水素では理論上は全く勝負になりません。
液化してぎゅうぎゅう詰めにしても原子サイズにはなりませんから。
合金の金属原子の格子間に詰め込まれた水素原子は出入りを繰り返すとどうしても金属の結晶構造が壊れます。繰り返しの使用に耐えるにはまだまだ技術開発が必要です。
また吸蔵と放出の過程に必要な熱源(吸熱反応熱と発熱反応熱)をどうするかというのも自動車の場合は非常に難しい問題です。
カーボンナノチューブを吸蔵合金と比較することはできません。
いくらナノメートルの世界と言っても分子の大きさです。
合金の格子間距離や水素原子の大きさと比べることはできません。
原理的には充填量が一番小さいと思います。
水素の充填密度だけで並べると、
(1)吸蔵合金、(2)スラッシュ水素、(3)液体水素、(4)高圧ガス水素、(5)カーボンナノチューブの順だと思います。しかし、エネルギーをぎゅうぎゅうに詰め込むということは見方をかえれば爆発物をつくっているようなものです。むやみに高密度にするだけではなく、軽くするとか、取扱いを楽にするとか、そういう方向で開発が進めばよいと思っています。
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